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約10分でザッと整理「店舗DXって何?」

2023.11.27
エクスぺリエンスデザイン本部 杉原 真人

今とこれからを考えるために、おさえておきたい6つのポイント―

2018年、経済産業省による『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』公表を契機に、広く認識の共有が進んだ《DX(デジタルトランスフォーメーション)》。今では毎日のように様々な関連ニュースが発信され、DX推進は多くの企業にとって今後の事業継続に大きな影響を及ぼす、目が離せない潮流となっています。

その中でも《店舗DX》とは、店舗などを有する小売業をフィールドとして展開されるDXを指しており、マーケットにおいて自社ビジネスの優位性を維持するための重要な取り組みと位置づけられています。ここでは、店舗DXの一般的な定義やそれが求められる背景、代表的な手法といった基本情報とともに、店舗DXを成功に導くためのポイントや具体的なサービス事例をご紹介します。

– Contents-

Point1.業務の効率化だけではない?店舗DXとは

Point 2.店舗DXが求められる背景

Point 3.DX推進により期待できるメリット

Point 4. 2タイプに分類できる店舗DX

Point 5.店舗DX導入の課題

Point 6.店舗DXを成功に導くために

SCOPEのデジタルツール事例紹介

まとめ

Point1.業務の効率化だけではない?店舗DXとは

店舗DXの概要

多くのコンテンツ上で店舗DXの定義が語られていますが、その要点は《様々なデジタル技術やビッグデータの分析・活用を通じて、店舗型ビジネスを根本から変革させようとする取り組み》といえます。少し漠然としたイメージですが、ここで最初におさえておくべきポイントは、店舗のDX化=デジタル化ではない点です。デジタル化の例としては、今まで紙で行われていた店舗における情報共有や従業員シフト調整をアプリで行うなどになりますが、これらは《ビジネスを根本から変革》するものとは言えません。従来紙ベースで行っていたワークをデジタルへ置き換える、いわば手段の変化が主眼となります。もちろん、その導入は店舗運営において効率化やヒューマンエラーの削減などに有効な手立てといえるでしょう。

店舗DXは自社と顧客双方にメリットをもたらすもの

一方、店舗DXとは、上記のようなデジタル化による環境整備もひとつのステップと捉えていますが、そこからさらに一歩進んだ先の領域までを含んだものになります。それは、新たなデジタル技術や様々なデータの活用を通じて、店舗運営や顧客サービスを根本からダイナミックに変えること。つまり、常に顧客に新しい満足体験や価値を届ける変革こそが、その目指す姿といえます。したがって、店舗DXにより自社の優位性を獲得・維持していくためには、効率化へのシフトチェンジはもとより、さらに快適な顧客体験の実現というピースが欠かせません。店舗DXの推進に際しては、《顧客視点》を決して置き去りにしないことが重要です。

Point2.店舗DXが求められる背景

DX推進は広く社会全般を対象とした潮流ですが、《店舗DX》についてそれが求められる主な要因を挙げておきます。

深刻な人材不足

少子高齢化が進む状況下、多くの産業で労働力の不足が深刻化しています。建設業・福祉・飲食サービス業などがその代表的な例ですが、小売業(販売従事者)も常に人材不足を抱える産業となっています。厚生労働省の発表(※1)によると、令和5年7月の統計において販売従事者の有効求人倍率は2倍を超え、求人数が求職数を大きく上回っています。今後も労働人口の減少が続くと予想されるなか、効率化もメリットのひとつに挙げられる店舗DXへの取り組みが小売業に求められています。

※1.厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) 参考統計表

ショッピングスタイルの多様化

新型コロナウイルス拡大を機に社会の生活様式が大きく変わり、リアル店舗ではダイレクトな接触や対面を避ける行動が求められました。これに応じるデジタル施策のひとつとしてキャッシュレス決済の導入拡大が見られましたが、経済産業省が掲げる目標や社会のニーズも相まって、キャッシュレス決済の比率は現在も上昇しています。(※2)

また、近年ECサイトを利用したショッピングが着実に広がりを見せています。経済産業省によれば、物販系分野におけるBtoCのEC市場規模は2021年から2022年にかけ13兆2,865億円から13兆9,997億円に増加しています。(※3)

もちろん新型コロナ禍の影響も大きいと想像されますが、リアル店舗の制約にとらわれない《いつでも》《どこでも》気軽に買物を楽しむスタイルは、今後もさらに支持を得ていくと考えられます。この点も店舗DXの導入が重要とされる要因となっています。

 

Point3.DX推進により期待できるメリット

冒頭でデジタル化の先までを含む店舗DXの領域について述べたとおり、それはまさにビジネスそのものを変革して、最終的に自社の価値・収益の向上を実現する取り組みです。ここでは店舗DXを通じて何が実現できるのか?企業サイドと顧客サイド双方の視点を交えながら、3つのメリットを解説します。

既存顧客の離脱防止 -体験価値の向上-

例えばキャッシュレス決済が可能になれば、顧客にとっては決済の選択肢が増えることになります。また、セルフレジの導入は店舗スタッフの負担軽減と同時にレジ待ち時間が短縮され、顧客にとっても精算時のストレスが減少するかもしれません。あるいは、アプリを使えば顧客はいつでも自身で購入履歴の確認や、お気に入り店舗の商品をチェックすることができます。このようにデジタル技術の活用は店舗運営の効率化と同時に、より利便性の高い買物体験の提供を可能にします。その体験を通じた買物満足度の向上は、顧客を自店に引き止める大きな要因となります。

新規顧客の獲得 -顧客接点の拡大-

デジタルの活用は、場所や時間の制約を受けることなく、新たな顧客開拓にトライアルできる手段となります。例えばオンライン店舗の展開は、まさに《いつでも》《どこでも》商品やサービスを検索・購入できる環境を顧客に提供することで、今まで想定できなかった新しいターゲットとの接点を生み出す大きなチャンスを秘めています。あるいは、ソーシャルメディアを使って自社のプロモーション情報の拡散を行えば、狙ったターゲット層に対してより広く効率的なアプローチが可能となるでしょう。

ビジネス戦略のヒントを得る -データの収集・活用-

導入するツールを適切に選択すると、店舗DXの推進によって購買行動や売上などに関する様々なデータを入手することができます。これらのデータ分析を通じて顧客のニーズを理解することは、マーケティングの精度を高めるだけでなく、自社の新たな課題やチャンスの発見など次の打ち手の示唆を得る機会にもつながります。このように、店舗DXの推進は企業と顧客双方のメリットを生み出すものと捉えることができます。

Point4.2タイプに分類できる店舗DX

店舗DXは施策の展開フィールドによって、大きくは以下の2つに分類されます。

リアル店舗で実施する《オフライン型》

実際に顧客が来店するリアル店舗を対象とした施策を指します。前述したキャッシュレス決済やセルフレジのほか、店内の顧客行動分析が可能となるAIカメラから在庫管理システムなどのバックオフィス支援まで、多様な施策があります。

オンラインで実施する《オンライン型》

こちらは、オンライン上でリアル店舗に近い買物体験を提供する施策です。ECサイトの構築が代表的な例ですが、仮想空間で店内を自由に回遊しながらショッピングが楽しめるバーチャルショップも注目を集めています。他にも、オンライン採寸サービスやチャットなどを使ったリアルタイムのオンライン接客など、時間や距離の問題を解決するサービスが次々と生まれています。

Point5.店舗DX導入の課題

多くのメリットが期待できる店舗DXですが、当然ながら導入にあたって注意しておく点もあります。一般に様々な課題が挙げられていますが、代表的な3つの注意点を説明します。

効果を得るためには一定の時間が必要

まず理解しておきたいのは、店舗DXの導入は短期間では効果が出ないということです。導入にあたっては自社に必要なデジタル技術やツールの検討期間が必要ですが、その後も従業員がそのツールを理解し、慣れるまでに一定の時間を要します。新たな業務マニュアルの作成も必要となるでしょう。さらに、稼働後も定期的に効率化や集客・売上などの効果をチェックし、運用の改善を検討するサイクルも必要です。このように、店舗DX導入には長期的な視点が欠かせません。

システムの移行や連携のコストが必要

多くのケースでは、すでに使用している自社システムからのデータ移行や新たなシステムとの連携に対するコストが発生します。店舗DXには効率化によるコスト削減などのメリットも期待できますが、先に述べたように効果が出るまでに時間を要することをふまえた上での投資計画が必要です。一方、後述するSemafor(セマフォー)やWalletCho(ウォレッチョ)のように、基幹システムに干渉することなく単独で稼働するデジタルツールもあります。導入にかかる時間やコスト削減策として、こういった視点からのツール検討もひとつの手段です。

人材の育成・教育が必要

店舗DXを導入すると、デジタル技術やツールを活用できる人材が必要となります。ただし、DX推進の拡がりによりデジタル関連人材を求める企業も多く、採用に際してはその数は不足している傾向です。また、自社で運用に関わるスタッフを育成する場合にも、新しい知識の教育が必要になります。

Point6.店舗DXを成功に導くために

なぜ?からはじめて、目的を明確に定める

オフライン型・オンライン型ともに店舗DXの施策は数多くあり、その対象や期待できる効果も多岐にわたっています。導入の検討にあたっては、現在必要な施策は何なのか?どんな目的に向かって何を解決すべきなのか?自社のビジョンに基づいたうえで、その優先順位を明確にしておくことが重要です。

外部サポートをうまく活用する

目的と課題が明確になったら、店舗DX導入にむけてサービスやツールの検討に入ります。多くの場合は自社の課題解決に必要な機能やツールの選定などについて、導入を支援する専門の取引会社と計画を進めていくことになります。その際は、導入の効果を得るまでに時間やコストがかかることも考慮のうえ、求める機能を満たしている会社か?お互いの予算感は合致しているか?導入後のサポート体制は整っているか?などを、しっかりと確認しておきましょう。

SCOPEデジタルツールの事例紹介

店舗DXのサービスは日々登場しており、それらを提供する会社にもそれぞれの得意分野があります。当社はメーカーとリテーラー、生活者の接点を最適化するコミュニケーションデザイン力をベースとしながら「ダイナミックな未来発想とデータ&テクノロジーで、カイモノを楽しくする。お客様を元気にする。社会を明るくする。」総合企画会社として、社会に貢献していく取り組みを続けています。ここでは、当社が扱っている店舗DXプログラムの中から代表的な3つのサービスをご紹介します。いずれも、これまでの事業で当社が得た知見を活かし、生活者・リテーラー双方のメリットを考慮した内容となっています。

有効期限チェック・管理のための世界トップクラスのビジネスソリューション

社会的に「SDGs」「サステナブル」「食品ロス」といったキーワードの露出が増えた今、 《SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)》に注目が集まっています。当然のように、有効期限の管理は商品を提供する企業にとって欠くことのできない業務の一つです。しかし、それは膨大な時間と労力を必要とすることから、現場の店舗スタッフにとっては大きな負担となっています。
そんな課題解決に、デジタル技術を活用して抜群の”効果”と”効率”を発揮するのがSemafor(セマフォー)。これはスウェーデンのフードテック企業Whywaste(ワァイウェイスト)社が小売り店舗向けに開発した、食品の《賞味期限》や薬品・生活消費材の《使用期限》を管理するアプリケーションサービスです。2020年6月に当社がグローバル・パートナーシップを締結し、《WhywasteJapan》にて日本での展開を開始しています。

基幹システムとの連携なく、単独で稼働

Semafor(セマフォー)はスマホやタブレットにダウンロードして単独で運用できますので、基幹データ連携等の手間をかけずに導入が可能。このサービスにより自店に並ぶ商品の有効期限チェックと管理作業のDX化が進み、店舗負担の大幅な軽減が実現します。さらに、こういった省力化の他に、売場担当者は信号に応じた対処(売り切るためのプロモーション)を行うことが可能となり、廃棄ロスの削減や品質管理のクオリティUP、収益の向上が期待できます。導入と運用が容易なアプリ型のパッケージシステムSemafor(セマフォー)は、世界20ヶ国、60以上の小売チェーンが採用。日本国内では13の小売チェーンで既にご採用いただいています。(2023年9月現在)

新時代のBtoC送金プラットフォーム

WalletCho(ウォレッチョ)は、当社が法人向けに提供しているBtoC送金サービスです。送金の対象となる顧客にE-mail・SMS等でURLを配布するだけで送金が完結。 顧客は会員登録やアプリのダウンロードをする必要もなく、ATM・銀行口座・スマホのウォレットなど、各々の生活様式や生活導線に合った方法で送金を受け取ることができます。

キャンペーンに付随する業務をワンストップでサポート

この機能により、金券の《購入・管理・封入・発送》などの手間やリスク・コストを削減しながら、販売促進・集客などの様々なシーンで送金を活用した施策を手軽に始めることができます。キャッシュバックキャンペーン、あるいは会員登録やSNSお友達登録インセンティブとしての現金送金などが代表的な例ですが、当社では送金システムのご提供にとどまらず、 WalletChoを活用した様々な販促活動の企画立案、応募・キャンペーンサイト制作からキャンペーン事務局の運営、結果分析までトータルでサービスのご提供が可能です。

簡単にオンライン店舗がスタートできる!

開発コスト0、既存システムとの連携不要。BASKET RESERVE(バスケットリザーブ)は、コストと時間を最小限におさえたクリック&コレクト導入支援サービスです。買物行動の多様化に対応し、これからのリアル店舗に求められる新たな生活者との接点を創出します。

Webサイトで事前オーダー(お取り置き)ができる買物システム

ECサイトで商品を購入し、リアル店舗や宅配ボックス、ドライブスルーなど自宅以外の場所で商品を受け取るショッピングスタイル、およびその仕組みを指すクリック&コレクト。非接触購買の拡大や時短ニーズに対応した、今伸長しているスタイルです。当社では最短でのオンライン店舗実装に向けて、早期立ち上げを支援。視認性を考慮した生活者目線のオーダー画面や、本部登録と店舗毎に対応できる機能を持たせた管理画面をご提供し、日々の運用業務をサポートさせていただきます。さらに、当社の知見を活かしたID-POSのデータ集積・その利活用によるプロモーション支援までを含めたDX推進支援サービスをご用意しています。

 

まとめ

新型コロナウイルスの拡大で社会は一変し、デジタル技術を活用して店舗ビジネスを大きく変革させる《店舗DX》の必要性は、ますます高まっています。店舗DXというと会計ソフトやセルフレジ、電子POPの導入など、デジタル化による効率アップやコスト削減策というイメージが先行するかもしれません。しかし、今まで述べてきたようにそれは店舗DXの一面に過ぎません。その本質は、より快適な買物体験の提供やビジネスの新たな価値を創造する点にこそあります。そして、その成果が結果として自社をマーケットで優位なポジションへと導くのです。

最後になりますが、店舗DXを運用するのは《ヒト》だという点にも留意が必要です。日々アップデートされていくデジタル技術を使えば、今後も様々なデータの入手が可能になるでしょう。つまり、それを適用する現場力もDX導入の成功に欠かせない要素であるといえます。店舗DXに取り組む際は、その目的と方向性をしっかり見定めたうえで、日々の業務や顧客の動向に精通した従業員・店舗スタッフなど現場の意見も積極的に取り入れながら、 《自社》《顧客》双方の視点から推進していくことをおすすめします。

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