SCOPE GROUP Sustainability SCOPE GROUP Sustainability
Instagram note
メニューを閉じる メニューを開く

アナログ媒体の効果検証から見通す「売場の未来」

2020.12.21
コミュニケーションデザイン本部 プランナー 伊藤 光浩

1. 今だからこそ「アナログ媒体の効果検証」実験中、その意図は?

当社では現在、POP・カタログ・各種エンドツールなど従来型の売場媒体について、改めてどのような要素をどう配置すれば視認効果(及び売上)が高まるか、といった効果検証実験を行っています。

今なぜ紙ベースのアナログ媒体を?という疑問をお持ちになるかと思いますが、それはネット通販に押され気味の「リアル売場の広告価値」が、近い将来激増するであろうという予測のもと、その基礎研究=ウォーミングアップをしておこうという、私たちなりの考え方があるからなのです。

2. これからどうなる?リアル売場の「未来予測」

2018年の書籍「小売再生ーリアル店舗はメディアになる」(ダグ・スティーブンス著)は、AI・VR・MR・3Dプリンターなどの普及により、近い将来の小売店舗は今とは全く違う形態になるであろうという予言の書でした。(インテリア店舗の商品を自宅に置いたイメージが確認できるMRシミュレーションの紹介など、内容はやや古くはなっていますが、”オムニチャネルから瞬間消費へ”など現在でも参考になる考え方が多い書籍です)

現在までの「リアル売場」は消費者の商品選択フローにおいて、主に「最終地点=購買」の役割を担っています。しかし近い将来AR/MRの普及によって購買の「認知~選択~購買」を全て担える可能性があり、それによって(注文して即商品を手にすることが出来ない)ネット通販を凌駕する可能性を秘めているのではないか、と思うのです。

3. 現在の「リアル売場」は、広告にとって「(未開拓の)宝の山」?

話はやや飛びますが、「マニュアル化された接客」「歩きスマホ」「ショールーミング」など、社会的に論議の的となるものについては、見方を変えると『いずれ将来普通に行われることが現在の価値規範に合ってないから問題』である状態とも言えます。「マニュアル化された接客」はいずれ「接客の自動化」へと繋がっていくと思われますし、「歩きスマホ」はAR/MRデバイスの普及によって「(下を向かずに)対象物と正対しつつ必要な情報を得る」へ、また「ショールーミング」は「売場に行けば商品選択における必要な情報が全て存在するはず(が、無いのでスマホで検索して購入してしまう)」という”逆説的な消費者ニーズの表れ“である、とも言えます。

(1)TVCMやWeb広告を見て興味を持ち、(2)ネットで調べ、(3)実店舗で購買するという基本的な購買の流れにおいて、売場は「ある程度の商品知識を持っているお客様に対応する」ことが暗黙の前提となっており、そこで提供される情報は基本的には商品パッケージ、および特定商品にPOP・エンドツール・リーフレットなどの媒体が補足されている程度と、全ての商品に詳しい商品説明とメーカーリンクを貼ることが可能なネット通販と比較して情報量は限定されたものとなっています。

以上のことから、現在の売場は「商品選択における必要な情報を充分に提供しきれていない」と言えるのではないかと思われます。また、それが故に広告業界にとっては「(未開発の)宝の山」であり、AR/MR等により充分な商品情報が提供される土壌が確立されたとしたら、メーカー各社にとっての「リアル売場の広告価値」は激増すると思われるのです。

4. AR/MRが普及したら売場はどうなる?(仮説)

お客様がAR/MRデバイスを装着することで、売場の見え方が一変するというイメージです。

商品パッケージと情報を紐付けられれば、全商品が広告の訴求対象となり得ます。手にとった瞬間に目の前にCMが流れるような状態です。また、3Dの演出オブジェクトを用いてエンドスペースを、カテゴリーコーナーを、商品群をどのように演出するかが店舗の腕の見せどころとなり、新たに「DVMD(デジタルVMD)」という概念が産まれるのではないかと予測されます。

また、それらの演出はAR/MRデバイスを装着している方のみが享受できる形となりますが、高齢者や視覚障害の方などに対してのニーズを満たすべく、従来型の訴求方法も変わらず共存していくのではないかと思います。

5. 売場のAR/MR広告、視覚効果のノウハウは従来型媒体の検証から

ここで、仮にAR/MRを用いた各種媒体を制作する場合、そのノウハウはどこから得るかが問題となります。リアル売場における「認知~理解~購入意欲」を高めるための視覚効果の流れは、平面かつ上下スクロールに限定されたWebとは全く異なるため、リアル売場に特化しているPOP・ボード・エンドツール・リーフレットなど従来型媒体から発展していくことが絶対的に必要となります。ここに私達がアナログ媒体の効果測定を行う理由があります。

6. AR/MRデバイスの現在 ~本格的な普及「前夜」~

参考: KDDIニュースリリースより
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2020/11/10/4778.html
12/1にauが5Gスマホと連動するMRデバイス「NrealLight」を一般発売するなど、徐々にではありますが2000年代初頭の「iPod前夜(発売前)」に雰囲気が似てきています。当時各社のMP3プレーヤーが乱立した後に満を持して発売し、一気に市場を席巻したアップルがいつAR/MRデバイスをリリースするかによってこの将来像は変わってくると思います。

7. おわりに

創業以来続く当社のモットーとして「変化対応」というものがありますが、コロナ禍によって一寸先すら見えにくくなってしまった現在においては、更に一歩進めて「予見対応」が必要と私たちは考えています。また媒体の効果検証結果等については、随時この場で紹介していきたいと思いますので宜しくお願いします。

関連記事

ページTopへ