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クリエイター注目!意匠法改正[後編]

ビジュアルコミュニケーションデザイン本部 エディター 村本倫子

~「画像」の意匠の調査を試す~

■1.クリエイターは意匠の調査をしよう

前編に引き続き、ウェブデザインと意匠法について考察していきます。
令和元年に意匠法が大きく改正されましたが、私の所感としては、現時点でもウェブクリエイターは美しいサイトづくりに夢中で、自分が制作するデザインが法律で保護されるとはあまり考えていないのではないでしょうか?今まではそうだったかもしれませんが、ウェブデザイン≒“「物品」から離れた画像”が意匠法の保護対象となったからには、デザインを制作する際、先に登録された意匠の調査をする必要があると考えます。理由は3つ。

1.事前に調査することで自分のデザインが登録済みの意匠と重複することを防げます。

2.自分が意匠登録出願をする際、後願であるという理由で拒絶されることを防ぎます。

3.意匠登録出願をしないにしても、登録済みの意匠を調べる行為自体が、全く新しい意匠を生み出す創作のヒントになります。

3つめに関しては、ウェブデザイナーの胸中はモヤモヤするかもしれません。ウェブデザインは自分の好きなサイトを模倣することでどんどん上達するスキルだったりもして…。しかしやはり優れたデザインには独占権が必要です。なぜならば独占権がないと模倣天国になってしまいますから。

■2. 新たに保護対象になったのは「操作画像」

意匠法上の「画像」として保護を受けるための要件
①ウェブサイトの商品購入用画像などの『機器の操作に供される画像(操作画像)』
②医療用測定結果表示画像などの『機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(表示画像)

これを知ったうえで、「ウェブの世界は、どのサイトでも似たアイコンが表示してあるから、ユーザーが操作しやすくてUI(ユーザーインターフェース)に優れたサイトと言えるのでは?」と言うウェブデザイナーは無欲です。一方で、野心家のウェブデザイナーは、アイデアマンである自分が稼げる時代がやってきたと考えます。
いずれにせよ「どんなウェブデザインの画像が意匠登録されるのか?」これこそ、全てのウェブデザイナーの素朴な疑問です。魅力的なウェブデザインのまとめサイトに掲載された優秀UIたちに熱視線が注がれます。
ウェブデザインの画像が登録されるのはいつ?もしかしてもう誕生しているけれど、意匠法独自の「秘密意匠制度」で一般に公開されていないだけかもしれません。

■3.定番のツールで意匠の調査を試す

私もいつの日か意匠登録出願をする日が来るかもしれませんので、ツールを使って画像意匠の検索の練習をしてみます。令和2年11月9日、日本で初めて「物品を離れた画像」が新・意匠法の保護対象として登録されたと聞きますので、今回、私が個人的に注目しているその意匠を見つけるべくトライします。調査は、工業所有権情報・研修館の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)から行うことができます。明治以降に発行された特許・実用新案・商標データベース化されています。

意匠に関する情報は膨大にあるため、検索で絞り込むのが普通です。絞り込む際は、「日本意匠分類」や「Dターム」と呼ばれる登録意匠についての分類を用います。たとえば「画像意匠分類の記号」は「W」です。このように調査にはかなりの専門知識が必要です。
今回は登録番号で検索し、データベースに掲載されている数百万件の中のうちたった1件の「物品を離れた画像」の意匠を見つけました。下の画像がそれです。

意匠登録第1672383号
「車両情報表示用画像」
<株式会社小糸製作所>

「物体を離れた画像」の登録意匠第1号は、バイクに搭載した機器により投影された画像です。バイクが方向を変える時にウインカーの役割を果たすのですね。

(図:経済産業省 2020年11月9日 ニュースリリース「画像の意匠が初めて意匠登録されました」より引用)
https://www.meti.go.jp/press/2020/11/20201109002/20201109002.html

データベースには、意匠登録出願の際の願書の内容や、出願日、登録日も載っています。新・意匠法の施行日である令和2年4月1日に出願し、「合格通知」と言える登録査定がされたのは同年10月26日ということまで知ることができました。

■4.画像ファイルを使って検索する新ツールを試す

次に、2015年に登場したツール「画像意匠広報検索支援ツール Graphic Image Park」を試します。最近、機能が強化され、2000年リリース「画像意匠広報検索支援ツールガイドライン」ではJ-PlatPatと併用することが推奨されています。こちらでは画像ファイルをサイト上にドロップすることで検索できるため、今後、「画像」の先願意匠調査をしたいと考えるクリエイターをサポートしてくれると期待しています。

「画像意匠広報検索支援ツール Graphic Image Park」

さきほど調べた意匠の画像を使って、調査の練習スタートです。こちらが検索結果。「J-PlatPat」だけでなく、こちらのデータベースにも、ちゃんと登録されていました。

調べるコツは、「標準」「色」「形」の各モードを使うこと。それぞれ異なる検索結果を得られます。上から、「標準」「形」「色」で検索した結果です。

検索を試してみて気づいたのは、日常生活でよく見かける意匠がたくさん引っかかり、知的財産戦略に力を入れている会社が視覚的に分かるということです。検索結果画面でAppleの意匠のとなりにたまたまGoogleの意匠が並んだり、意外なところで両社の存在感を見せつけられました。令和元年の意匠法改正で新たに保護対象となった「物品を離れた画像」の意匠の代表例は「商品購入画面」ですが、そうなると今後、Amazonの躍進がこのデータベースでも見られるようになるのでしょうか?

■おわりに

「J-PlatPat」と「Graphic Image Park」などのデータベースに登録された数々の登録意匠はクリエイターに“知的財産の基礎知識”や“新しい創作のヒント”をくれます。2020年4月の施行から9カ月たった現在(2021年1月時点)、ウェブデザインの操作画面に関する登録意匠は公開されていません。私はその登場を心待ちに、今後も時々データベースを覗いてみようと思います。

参考文献
■経済産業省 2020年11月9日 ニュースリリース「画像の意匠が初めて意匠登録されました」
https://www.meti.go.jp/press/2020/11/20201109002/20201109002.html

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