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物価高時代に家庭の防災ニーズを満たす 新たな戦略のヒントとは?

2023.09.19
データドリブンプロモーション本部 今井 洋

今年は関東大震災から100年目。近年は、地震による被害だけでなく、台風や豪雨による甚大な被害が各地で続発しており、私たちは自然災害の脅威、すなわち発生頻度、被害の甚大さに直面しています。家庭における防災の必要性が高まっている中、防災対策の手段の一つとして「防災グッズや非常食の備蓄」があります。しかし、現在の社会情勢変化や経済の不確実性から、防災グッズも例外ではなく、価格が上昇しているのが実情です。そこで、物価高の時代における防災意識や行動の変化をアンケートによって探り、現代の防災における新たなトレンドやニーズに迫り、どのようなアプローチが求められているのかを明らかにしたいと思います。今回は、2023年8月18日(金)~20日(日)の3日間、20〜69歳の男女500人を対象にオンラインアンケートを実施しました。

■自然災害時のリアルな課題。日常から避難所までの主要な3つの懸念

<Q. 現在の自然災害に対する不安度をお答えください。>N=500

>64.4%の人々が自然災害に対して「不安だ」と回答しており、多くの人々が災害のリスクに関心を抱き、対策の重要性を認識しているようです。

<Q. 自然災害が発生した際に特に不安を持っている身の回りの被害を以下の選択肢からすべてお選びください。>N=500

自然災害に対する不安は、停電や浸水、通信断絶、飲料水・食品不足から盗難まで多岐にわたっており、生活の様々な側面に影響を及ぼす要素が挙げられました。

●生活基盤への不安…インフラや食糧確保といった生活基盤への不安が特に大きく、家庭における備蓄品の代表である非常食だけでなく、携帯用バッテリーや、最近注目度が高まっているポータブル電源の需要も高いことがわかります。

●住居と健康への懸念…住居の損壊や医療・救助の遅れなど、安全な住環境と健康に関連する要素に対する不安も顕著です。

●避難所とコミュニティの問題…避難所での混雑やプライバシーの問題、他人とのトラブルなど、避難所での生活に関連する不安もみられます。実際に避難を経験した方、メディア等により避難の実態を目にすることで、避難所での生活環境の改善が必要だと感じている人が多いことが窺えます。

■備蓄率6割、でも「完全」ではない…家庭の防災準備の現状

<Q.あなたのご家庭における、現在の防災グッズや非常食の備蓄状況を以下の選択肢からお選びください。>N=500

>防災グッズ・非常食の備蓄状況に注目するとともに備蓄率は6割強。その中でも「少し備蓄している」割合が最も高く、一部の人々はある程度の備蓄対策を行っているものの、完全な準備はまだ進んでいないことがわかります。また、「全く備蓄していない」割合も4割近くいます。

■財布とのせめぎ合い…家庭が直面する物価上昇と防災準備

<Q. ここ数年における「防災グッズ」「非常食」の購入や備蓄に関する意識・行動として、それぞれご自身に当てはまるものをすべてお選びください。>N=500

防災グッズや非常食の購入や備蓄に関する意識・行動について聞いたところ、物価高の影響が大きく、物価高を乗り越えるための新たなアプローチが求められていることが明らかになりました。

❶防災グッズ

>物価高により、欲しかった防災グッズの値段が高くなったと感じる人が15.8%存在しており、実際に9.2%の人が物価高により、欲しかった防災グッズの購入を諦めたり躊躇した経験があることから、物価上昇が購買意欲に影響を及ぼしています。

>他にも、物価高により防災グッズの買い替えのタイミングを遅らせる人や、他の商品と比較検討する人が一定数存在します。また、使用期限切れのアイテムを捨てずに備蓄するなど、物価高の影響を受けて行動する人が見られます。

❷非常食

>非常食に関しても、18.0%の人が欲しかった非常食の値段が高くなったと感じており、8.4%の人が物価高により非常食の購入を諦めたり躊躇した経験があり、非常食の購入や備蓄に対する物価高の影響は、防災グッズ以上であるようです。

>物価高を意識して、他の商品と比較検討する人や、コストパフォーマンスの高い非常食を選ぶ人がいる一方で、5.8%の人が使用期限切れの非常食を捨てずに備蓄するなど、物価高の影響を受けて行動するケースも見受けられます。

■物価高の中、どう備える?家庭が望む防災グッズの実態

<Q. 物価高を考慮し、防災グッズや非常食に対して期待する点や必要なアイテムについて、どのようなものがあれば購入したいと思いますか?>N=500

防災意識の高まりや物価の影響を受けながらも、効果的な備えを検討する人々の現実的なニーズが見えてきました。

>まず最も高いスコアを持つのは、「品質が高くて長期間使えるもの」(47.4%)です。長期の備えを支えるために、品質が優れていて耐久性のあるアイテムに重要な価値を見出しています。

>次に、賞味期限が長くて安心して保存できるアイテムへの関心(43.8%)が高まっています。非常食や保存食においては、長期の保存が求められるため、賞味期限の長さや保存方法の信頼性は購買の要因となっています。

>「リーズナブルな価格で購入できるもの」への要望(42.6%)も非常に高く、家計への負担を軽減しながら、必要なアイテムを手に入れたいという意識が見えてきます。

>また、「保存食や非常食でありながら、日常的にも利用できるもの」(30.4%)への関心も高いです。経済的かつ効率的な選択として、非常時だけでなく普段の食事にも活用できるアイテムが求められています。

■価格と品質、両立可能?消費者の防災商品への要望

<Q. 物価高の現在における防災に対して、各種商品を作るメーカーや販売する店舗に対して意見や要望があれば、自由に記述してください。>N=500

※ユーザーローカルAIテキストマイニングツールで調査 https://textmining.userlocal.jp/

>全体的には、防災用品の普及や価格の抑制、品質の向上が求められており、具体的な要望としては、保存期間の長い食品やコンパクトな防災グッズ、安価な商品などが挙げられています。また、消費者が防災について詳しくない場合でも理解しやすい情報や、日常生活での活用方法についての情報も求められています。さらに、補助金の提供、公的支援の充実なども要望されています。

このように、多くの人々が災害時に備えるための食料やグッズを手に入れることができるようにしたいと考えていることがわかります。

★今回の気付き・ラーニング

今回の調査から、経済の不確実性や物価の高騰が家庭の備蓄行動に影響を与えていることが明らかになりました。そのような状況下でも、家庭の備蓄行動や防災に対する意識が高まっている今だからこそ、小売り・メーカーに携わる方々は、新しい商品や売り方・サービスを展開する必要があるのではないでしょうか。

例えば…

★サブスクリプションモデルの導入

物価の高騰を考慮し、一時的な大きな出費を避けたい消費者のために、毎月少額で防災グッズや非常食を少しずつ提供するサブスクリプションモデルを展開。長期契約者には特別な防災グッズや情報誌の提供といった特典も検討。

 

★高額防災用品のリースサービス

物価高を背景として、一時的な大きな支出を回避したい消費者のニーズに対応。高価で耐久性のある防災アイテム、例えばポータブル電源などを月額の低料金でリースするサービスを導入。一定期間ごとに最新のモデルへのアップデートも検討し、常に最新の技術を手元に持つことができる仕組みを構築。

 

★災害保険付き商品の販売

物価高の中でも、品質や安心感を求める消費者のニーズを捉え、一部の防災アイテムに災害・障害保険を付属させる形で販売。これにより、商品の購入と同時に安心を手に入れることができる独自のサービスを提供し、他社との差別化を図る。

 

★アウトドアグッズの防災展開

アウトドアと防災の共通点を活かして、アウトドアグッズを防災アイテムとしても使用できる二重の価値を持たせる。これにより、日常のレジャーシーンでも使用できる商品を提供し、購入の際の価値感を高める。

 

★限定版商品の提供

物価高の中での付加価値作りとして、各地域の特色を生かした非常食や人気キャラクターやブランドとのコラボレーション商品を提供。例えば、北海道産のジャガイモを使用した非常食や、人気キャラクターのイラストが入った防災グッズなどで、購買意欲を刺激。

 

★防災グッズの下取りサービス

持ち家の防災アイテムを最新のものに更新したい顧客のための下取りサービスを実施。下取りされたアイテムは、必要とされる施設への寄贈や店舗内での展示・実演などに利用し、企業の社会的責任(CSR)活動としての価値も高める。

 

★体験型防災ワークショップの開催

物価高の中でのローリングストックとしてのアプローチ。使用期限が近い非常食の美味しい調理法のデモや、保存食の手作りワークショップを実施。非常食の新しい楽しみ方や、家庭での保存食作りのスキルを習得できる場として、購入のきっかけ作りをサポート。

 

このように、生活者の気持ちを掴むチャンスが生まれるのではないでしょうか。この調査が皆さまの企画のヒントに少しでもお役立ちできたら幸いです。

■調査方法:ウェブ調査

■調査エリア:全国

■調査対象者:20〜69歳男女

■サンプル数:合計500サンプル (20代~60代まで男女各50名)

■調査期間:2023年8月18日(金)~20日(日)

■株式会社ディーアンドエムの登録会員を対象に調査を実施

私たちが所属するデータドリブンプロモーション本部(DDP)は生活者心理・購買行動などあらゆるデータを収集・解析し、クライアントにおけるコミュニケーション戦略を立案している部門です。

当本部では、「生活意識の変化」「買い物の未来」「健康寿命の延伸」「SDGs」の4つをテーマに、自主調査を通じて生活者の行動や意識を把握しています。その結果とともに、これから先に起こり得る変化や、商品・サービスなどの企画のヒント等を私たちなりの視点での「気付き」をコラム形式でお届けしていきます。

具体的な課題をお持ちの方、課題が見えていない方でも皆様の状況に合わせたベストなソリューションをご提案します。

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