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【追跡レポート】自転車ヘルメット着用努力義務化から1年。生活者の意識と行動の変化を徹底分析

2024.03.29
データドリブンプロモーション本部 今井 洋

2023年4月1日にスタートした「自転車ヘルメットの着用努力義務化」が1年を迎えようとしています。この変化は、自転車売り場の光景にも顕著に表れており、ヘルメットコーナーが拡充され、着用の必要性を告知するポスターが目立つようになりました。街を見渡すと、ヘルメットを着用している人々の姿が増えてきたことは確かですが、全ての自転車利用者が着用するには程遠い状況です。
そこで、2024年の3月に「日々のお買い物で自転車を利用している」20代から70代の女性300人を対象に、ヘルメット着用の意識や実態、そしてお買い物への影響についてのアンケート調査を実施しました。弊社が施行前の2023年2月に行った意識調査とも比較し、自転車ヘルメット着用努力義務化がもたらした影響や生活者行動の変化を明らかにし、市場における新たな動向や機会についても深く掘り下げていきたいと思います。

■認知率は9割超えるも着用率は2割と低迷

>自転車ヘルメットの着用努力義務化が施行されて1年が経過し、その認知は大きく増加しました。2023年2月には既に8割近くの人がこの制度を知っており、現在では9割を超える人々が認識しています。詳細についても、理解している人の割合は2倍近くに増えました。とはいえ、実際のヘルメット着用率は意向よりも低いままです。
>2023年2月に「常に着用したい」と考えていた人は8%でしたが、2024年3月時点で実際に常に着用している人は11%に留まっています。また、状況に応じて着用を考えている人は22.7%いましたが、実際にそのようにしているのは11.7%です。このようにヘルメット着用の重要性に対する意識は高まっているものの、実際の行動変化にはまだ距離があることがわかります。認知の向上だけでなく、ヘルメット着用を促進するための更なる施策が必要といえます。

 

■「努力義務」の限界?安全面は理解していても、見た目と髪型への懸念は未解決

<Q.昨年(2023年)の4月1日からスタートした「自転車のヘルメット着用努力義務化」に対する現在のあなたのお気持ちについて、以下の項目ごとに当てはまるものを1つお選びください。>

>自転車ヘルメットの努力義務化に対する意識は高まっているものの、それが実際の着用へと結びついているかは別の話のようです。83.3%が事故防止のためにヘルメットの着用を支持しており、79.3%はこれを社会的責任だと感じています。ですが、「努力義務」という言葉の裏で、着用しない人が多いと感じる人も同じくらいの割合でいます。
>着用率が伸び悩む原因として、「ヘルメットを被った自分の姿」や「着用後の髪型の乱れ」が大きなハードルとなっているようです。これに加え、他の人の着用状況に目を向ける人も多く、社会的な圧力を感じる人は63%にのぼります。さらに、ヘルメット選びに迷う人も半数以上おり、その持ち運びや盗難の心配が行動を阻害していることが窺えます。

■ 法改正が変えた市場、安全意識の高まりと購入先の多様化

<Q.あなたが自転車に乗る際に着用しているヘルメットの購入時期について、以下の選択肢より最も当てはまるものを1つお選びください。>

<Q.あなたがお持ちの自転車用ヘルメットはどこで購入したものですか?>

>自転車ヘルメット着用者68人については、ほぼ4分の3が努力義務化後に購入しており、新しい法律が安全に対する認識を高め、実際の行動に変化をもたらしたことを表しているといえます。ヘルメットの購入先は、自転車店に留まらず、オンラインショップ、ホームセンター、ディスカウントショップにまで幅広く、安全意識の高まりだけでなく、利便性や価格など利用者のニーズや生活スタイルに合わせた多様な選択肢があることがわかります。

■ヘルメットの普及には「使いやすさの革新」と「着用へのためらい解消」の同時実現が不可欠

<Q.あなたが自転車用ヘルメットを着用する際、何か困ったことや不満に感じることはありませんか?>

<Q.昨年(2023年)の4月1日から「自転車のヘルメット着用努力義務化」がスタートしていることをご存じではあるが、ヘルメットの着用をしていない理由は何ですか?>

>自転車ヘルメットの着用に関して、着用者も非着用者も共に直面している大きな問題は持ち運びの不便さです。これが着用率を抑えている主要な要因の一つであることが明確になりました。さらには見た目に関する問題、特に髪型が乱れることへの懸念やヘルメットの通気性、重さ、そして視界を遮ることへの不満も、着用のためらいに大きく影響しているようです。
>着用を避ける理由としては、「面倒くさい」という直感的な感覚が挙げられており、「短距離移動のため、着用の必要性を感じない」や「閑静な道なので事故のリスクは低い」といった声からも努力義務という比較的緩やかな法規定が、その意欲に影響を与えている様子が見えてきます。さらに、価格の高さは、特に定期的に自転車を利用しない人々にとって購入のハードルとなっていることがわかります。

 

■「自転車利用を減らす」「ネットスーパーや他の移動手段を活用」着用努力務化をきっかけに2割の人が買い物習慣を見直した

<Q.昨年(2023年)の4月1日から「自転車のヘルメット着用努力義務化」がスタートして以降の「日常の食料品の買い物」についてのご自身の行動について、以下の選択肢より最も当てはまるものを1つお選びください。>

* 「自転車ヘルメット着用努力義務化」がスタートしていることを知っている人を対象に、各項目において「そもそも自転車を使っていない」もしくは「このような買い物の仕方をしていない」人を除いた数が分母

>自転車ヘルメット着用努力義務化が施行されたことを知ったことによる買い物行動については、約7〜8割の人が日常の自転車使用に大きな変化は無かったと回答しています。しかし、それでも2〜3割の人々が何らかの形で自転車利用を減らしたり、別の移動手段へとシフトしたりしていることから、一定の影響は見受けられます。
>具体的には、距離や買い物の目的に応じて自転車利用の頻度が少し減少したり、完全に違う交通手段を選択したりする割合が若干高まっています。これは、自転車の安全に対する認識に加え、ヘルメットを携帯することの手間やその着用に関連する不便さが影響している可能性があると思われます。特に重い荷物を運ぶ場合や、日用品をまとめ買いする際など、ヘルメットの存在がさらに重荷となっているようです。
>また、一部の人々はネットスーパーを利用するようになったと回答しています。この様に自転車ヘルメットの努力義務化が消費者の買い物行動に様々な影響を与えており、その影響は一概には測れない複雑さを持っていることがうかがえます。自転車ヘルメットの努力義務化は、利用者の生活パターンや選択に微妙ながらも確実な変化をもたらしていると言えそうです。

★今回の気づき・ラーニング

自転車ヘルメットの着用努力義務化から1年が経過する今、努力義務化への認知は9割を超え、詳細理解も倍増しましたが、着用率は常に着用している人で11%と低迷。多くが緩やかな法規定の下で着用をためらっていることがわかります。
自転車ヘルメットの普及を進めるためには規則の強化が一番早いですが、「86年ショック」と呼ばれた1986年の原付バイクのヘルメット義務化と同じように大きな反発は起こるでしょう。ただ、8割以上の方が事故防止の点からもヘルメットの必要性は感じており、自身の命を守る重要なアイテムであることに変わりはありません。商品の売り手や作り手側は改めて生活者の気持ちに沿ったヘルメットそのもの使いやすさの革新と着用へのためらいを解消するための施策が必要なのではないでしょうか。
また、注目すべきは、生活者の2~3割が買い物行動を変更、ネットスーパーや他の交通手段へシフトしていることです。これは、安全意識の高まりや、逆にヘルメットを被りたくないという気持ちが買い物選択に直接影響を与えていることを表しているといえ、買い物スタイルの変化に対応した店舗の取り組みも必要と考えます。

例えば、
●「オンライン注文後の店舗受け取りサービス(BOPIS)」の拡充であれば、ヘルメット持参による不便さを軽減するだけでなく、新型コロナウイルス感染症の影響で増加した非接触型サービスの需要にも応えることができます。さらには、自転車用のドライブスルー窓口の設置や、窓口での受け取り時にヘルメット着用者を対象としたポイントなどのインセンティブ提供があれば、着用促進にも繋がります。また、ヘルメット着用努力義務化を機に別の移動手段へシフトしたお客様にとっても、BOPISのサービスは自転車同様、手軽でかつ安全な買い物機会を提供できます。

●ヘルメットそのものについては、IoT技術を活用し、温度や湿度を調節し髪型が崩れにくく快適な環境が作れる“スマートヘルメット”があれば、着用による悩みを大きく軽減できると思います。実現できれば自転車ヘルメットの着用を促進する大きな動機付けとなり、新たな市場創出にも繋がると思います(まだまだ夢物語なのかもしれませんが…)。

この調査が皆さまの企画のヒントに少しでもお役立ちできたら幸いです。

■調査方法:ウェブ調査

■調査エリア:全国

■調査対象者:日々の食料品の買い物で自転車を使っている20歳~79歳既婚女性 *子ども有無の条件無し

■サンプル数: 本調査 合計300サンプル (20代~70代まで各50名)

■調査期間:2024年3月12日(火)~13日(水)

■株式会社ディーアンドエムの登録会員を対象に調査を実施

 

私たちが所属するデータドリブンプロモーション本部(DDP)は生活者心理・購買行動などあらゆるデータを収集・解析し、クライアントにおけるコミュニケーション戦略を立案している部門です。

当本部では、「生活意識の変化」「買い物の未来」「健康寿命の延伸」「SDGs」の4つをテーマに、自主調査を通じて生活者の行動や意識を把握しています。その結果とともに、これから先に起こり得る変化や、商品・サービスなどの企画のヒント等を私たちなりの視点での「気付き」をコラム形式でお届けしていきます。

具体的な課題をお持ちの方、課題が見えていない方でも皆様の状況に合わせたベストなソリューションをご提案します。

ご気軽にお問い合わせください。

※本情報の引用・転載時には、必ず当社クレジットを明記いただけますようお願い致します。

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