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– 買い物におけるサステナビリティの現実 – 2022-2024調査から見る意識と行動の進展と店舗戦略へのヒントを探る

2024.06.03
データドリブンプロモーション本部 今井 洋

6月は環境月間。私たちの日常生活の中で増え続ける「SDGs」というワード。特に私は、子ども向け番組でこのテーマに頻繁に触れることが多く、その言葉がいかに社会に浸透しているかを実感しています。当社は2022年5月に食品スーパーでのお買い物を通じた消費者のサステナビリティに対する意識と行動を探る調査を実施しました。今回はその調査から2年後の状況を見て、どのような変化があったのかを明らかにします。
流通店舗が取り組むサステナビリティの実践は、消費者の店舗選択や店舗に対する好感度、愛着、そして最終的な商品購入にどのように影響しているのか?この点を深掘りし、流通店舗が社会的責任を果たし、消費者から選ばれ続けるためにどのようなサステナビリティアクションが効果的であるかのヒントを探ります。

■性別・世代を問わず高まるサステナビリティへの関心

<Q.数年前と比べて、社会全体や身の回りにおけるサステナブルな取り組みに対する関心はどのように変化していますか。>N=1,000

*20代~60代 合計、性別・性年代別スコア

>最近の数年間で、社会全体におけるサステナブルな取り組みへの関心が、明らかに高まっています。特に男性の関心の増加は顕著で、これまで女性がリードしてきた持続可能な取り組みへの配慮が、男性にも広く受け入れられるようになっていることがわかります。さらに、サステナブルへの関心が若年層だけでなく、中高年層にも広がっていることから、社会環境への責任感が高まる中、多くの人々が個人の行動レベルで貢献しようと努力しているようです。

*世帯年収別スコア

>また、世帯年収が高い層ではサステナブルな取り組みへの関心が特に高く、環境等に優しい選択をしやすくすることからも、サステナビリティは単に個人の意識の問題ではなく、経済面との関連が強いことがわかります。

■認識と実践のギャップ…「何をすればいい?」と「コストの心配」

<Q.あなたのサステナブルな取り組みについての考えについて伺います。以下の項目ごとに、それぞれ当てはまるものを1つずつお選びください。>N=1,000

*20代~60代 合計、性別・性年代別スコア

*①当てはまる ②どちらかといえば当てはまる ③どちらともいえない ④どちらかといえば当てはまらない ⑤当てはまらない の5段階のうち、TOP2(①+②)のスコア

>多くの人々が、現在や未来のために、日頃からサステナブルな行動を取ることが必要だと考えており、個人だけでなく企業や自治体を含む組織全体の社会的責任として認識されています。
>しかし、この強い意識とは裏腹に、多くの人が貢献したいと願いながらも、実際にどのような行動をとれば良いのか、具体的な行動方法に迷いを感じている人も多く、47.4%の人がサステナブルな行動の具体的な方法を知らないと回答しており、51.2%の人がそれに伴う費用の負担を感じています。また、「実際にサステナブルな取り組みを行っている人は少ない」と感じている人も57%おり、「理想」と「現実」の隔たりが存在することが窺えます。

■迷いを感じている中でも、日々の買い物を通じてサステナブルな取り組みの実践はさらに浸透

<Q.以下の項目ごとに、普段食品スーパーで食料品を購入する際のあなたの意識・行動について、それぞれあてはまるものを1つずつお選びください。>N=1,000

*20代~60代 合計スコア

*①実際に行動している ②関心はあるが、行動には移せていない ③関心が無い の3段階のうち、①実際に行動している のスコア

>食品スーパーでの買い物行動を見ると、様々なサステナブルな行動が、2年前と比較して大きく向上しています。
一部をピックアップすると…

●「エコバッグを持って買い物へ行く」は全体の91.5%に達し、2年前と比較し3.9pt増加しています。
●フードロス削減に寄与する「早めに食べられる時は賞味期限が近い商品を選ぶ」行動は、55.3%から66.9%へと大幅に伸びており、消費者がより意識的な選択をしていることが窺えます。
●「地元の店で買い物をする」という、地域経済の支援とフードマイルの削減を意識した買い物も2年前から5.2pt増加の72.1%しています。

>前問で47.4%の人々が「サステナブルな行動の具体的な方法を知らない」と回答していましたが、このように、日々の買い物を通じてサステナブルな取り組みの実践が浸透しており、環境等への負担を減らしながらも、日常生活の中で実用的な選択をしていることがわかります。

■物価高にも対応。直接的な経済的利益を感じられる取り組みが、持続可能な消費行動を後押し

<Q. 以下の食品スーパーで実施されている「サステナブルな取り組み」に対するあなたご自身のお気持ちをそれぞれ1つずつお選びください。>N=1,000

*20代~60代 合計スコア

*①とても関心がある ②関心がある ③どちらかといえば関心がある ④どちらともいえない ⑤どちらかといえば関心が無い ⑥全く関心が無い の6段階のうち、TOP2(①+②)のスコア

>食品スーパーでのサステナブルな売り場の取り組みについても、2年前と比較しても支持が拡大しています。

●「消費期限が間近の商品の割引販売」や、「賞味期限が近い野菜・果物をまとめて陳列」といったフードロスの削減と経済的な節約の両面でメリットがある取り組みに対する関心がさらに高まっています。また、バラ売り・量り売りを通じて必要な分だけを購入できることも、家庭内での食品ロスを削減しつつ、物価の上昇に対する賢い対応策としても注目されそうです。
●肉や魚のトレー販売を削減し、袋や紙包装を導入するなどのプラスチック削減策や、過剰演出を抑えた売り場も、環境負荷の低減が消費者に直感的に伝わる関心度の高い取り組みと言えます。

■地元愛からサステナビリティへ。地産地消への関心増加が示す、消費者行動のエシカルな進化

<Q.以下の食品スーパーで販売されているサステナブルな商品について、あなたの意識・行動について、それぞれあてはまるものを1つずつお選びください。>N=1,000

*20代~60代 合計スコア

*①実際に購入している ②関心はあるが、購入したことは無い ③関心が無い の3段階のうち、①実際に購入しているのスコア

>食品スーパーで販売されているサステナブルな商品への購入も、過去2年間で顕著に高まっています。
>特に、地域経済の支援や温室効果ガス削減に繋がる「地産地消の商品」が全体の61.1%でトップ。2年前より3.1pt増加しています。また、リサイクル可能な容器を使用した商品やプラスチック包装を避けることなど、環境への負荷を減らす選択への支持率が着実に上昇しています。
>その他、社会的・環境的な責任を果たす商品に対する支持も全体的に増えており、消費者は購入を通じて社会への貢献を望んでいることがわかります。消費者は単に価格や品質だけでなく、商品が環境や社会に与える影響を重視するようになっていることがわかります。サステナブルな商品への増加する関心への高まりは、消費者の行動がより意識的でエシカルな方向へと進んでいることを表しているといえます。

■サステナブルな商品に対するプレミアム。10%の壁を超えられるか

<Q.ある食料品が通常税込100円で販売されています。この商品を以下の理由で価格の上乗せを行う場合、あなたはどれくらいの価格までなら支払う意思がありますか?>N=1,000

*20代~60代 合計スコア

>サステナブルな商品に対する支出意欲は存在するものの、その限界も明確です。多くの消費者は価格の10%増までなら受け入れる可能性がありますが、それ以上の価格上昇には抵抗がある様です。
>「熱帯雨林の保護への貢献(売上の一部が寄付される)」「認証取得素材の使用(食物資源保護や生産者支援)」といった直接的な環境保護や社会的貢献を伴う目的では、消費者は追加コストを受け入れやすい傾向にあることが見えてきました。

★今回の気付き・ラーニング

サステナビリティへの意識が社会全体で顕著に高まっている中、特に男性や中高年層の意識変化が目立っています。環境への責任感が深まり、多くの人々が日常の行動を通じて貢献しようと努力している様子が見られます。しかし、具体的な取り組み方法やそれに伴うコストに対する不安から、実際に行動に移すまでのハードルが高いと感じている消費者もいます。

物価の上昇が続く現在でも、消費者は日々の買い物を通じてサステナブルな行動を増やしています。特に、自分にとって直接的な経済的利益を感じられる取り組みや商品は、持続可能な消費行動を後押ししています。これにより、サステナブルな商品が市場で成功するためには、適切な価格設定がカギを握っていると言えるでしょう。企業は消費者がどの程度まで価格上昇を受け入れるかを見極め、その範囲で価格戦略を練る必要があります。

流通店舗が提供する参加しやすいサステナブルな取り組みは、消費者の迷いを解消し、より多くの人々が積極的に参加できる機会を創出しています。店舗が行うサステナブルな取り組みは、単に環境に優しい選択を促すだけでなく、消費者との強い結びつきを築き、社会全体にサステナビリティを普及させる動きの加速に重要な役割を果たしています。

今回の調査結果から、地域密着型のサステナブルな取り組みを一例に挙げてみると、
地域の生産者やメーカーと連携し、地元で生産された食品を積極的に取り入れることでポイント等が付与される「ローカルフードプログラム」の展開や、季節ごとに特定のサステナブル商品やローカルフードを特集するポップアップ・コーナーの設置を促進することで、消費者は季節に応じた持続可能な商品を簡単に見つけることができ、地元生産者やメーカーを支援することができるのではないでしょうか。

また、店舗設計においても、省エネルギー型の照明や装飾、再生可能エネルギーの使用などエコフレンドリーな施策の導入を促進することも、消費者に店舗の環境への配慮を直接感じさせる方法といえます。
これらの取り組みは、消費者がサステナブルな行動を選択しやすくするだけでなく、流通店舗が社会全体のサステナビリティへの貢献度を高める手段となります。

この調査が皆さまの企画のヒントに少しでもお役立ちできれば幸いです。

当社では、『SCOPE GROUP Sustainability』として様々な取り組み・活動を行っており、レポートとしてもご報告しております。是非そちらもご覧ください。
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■調査方法:ウェブ調査
■調査エリア:全国
■調査対象者:20歳~69歳男女  ・未既婚の指定、既婚者の子ども有無の条件無し
・食品スーパーの実店舗で食料品を購入時に「サステナブルな買い物」を意識している
■サンプル数: 本調査 合計1,000サンプル (20代~60代まで各100名)
■調査期間:2024年4月25日(木)~26日(金)
■株式会社ディーアンドエムの登録会員を対象に調査を実施

私たちが所属するデータドリブンプロモーション本部(DDP)は生活者心理・購買行動などあらゆるデータを収集・解析し、クライアントにおけるコミュニケーション戦略を立案している部門です。

当本部では、「生活意識の変化」「買い物の未来」「健康寿命の延伸」「SDGs」の4つをテーマに、自主調査を通じて生活者の行動や意識を把握しています。その結果とともに、これから先に起こり得る変化や、商品・サービスなどの企画のヒント等を私たちなりの視点での「気付き」をコラム形式でお届けしていきます。

具体的な課題をお持ちの方、課題が見えていない方でも皆様の状況に合わせたベストなソリューションをご提案します。

ご気軽にお問い合わせください。

※本情報の引用・転載時には、必ず当社クレジットを明記いただけますようお願い致します。

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