【未来からほめられるアクション1】 再生可能エネルギーについて考える
2025_SCOPEカレンダー連携コラム
2025年スコープカレンダーでは、毎月、サステナブルな記念日をピックアップし『未来からほめられるアクション』と共にご紹介しています。1月の記念日は1月26日の『クリーンエネルギーの国際デー』。クリーンエネルギーの現状と課題、私たちができるアクションについて詳しく見ていきましょう。

■『クリーンエネルギーの国際デー』とは
1月26日はクリーンエネルギーの国際デーです。人と地球のために、クリーンエネルギーへの公正で包括的な移行に対する意識を高める国際的なイベントとして、具体的な行動を呼びかける機会となっています。
近年、地球温暖化に対する危機感が世界中で急速に高まっています。パリ協定で地球の平均気温の上昇を1.5度に抑えるという目標が示され、世界各国が温室効果ガス削減に向けて努力を続けてきました。しかし残念ながら現在のペースで気温上昇が続くと、2030年前後には1.5度に達する可能性があると言われています。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、国際デーに寄せたビデオメッセージの中で、クリーンエネルギーを「継続的に恩恵をもたらす贈り物」に例え「クリーンエネルギーへの移行は必要ではなく必然」との力強いメッセージを発信しました。
気温上昇を1.5度に止めるためのタイムリミットが近づいています。政府、国際社会、そして個人に至るまで、あらゆる主体が未来のために行動を起こす時を迎えているのです。
■クリーンエネルギーとは
クリーンエネルギーとは、発電や熱供給の際に温室効果ガスや有害物質を排出しない、またはその排出量が非常に少ないエネルギーのことを指します。自然由来のエネルギーであり、再生可能エネルギーとも呼ばれます。代表的なクリーンエネルギーには以下の5つがあります。
- ① 太陽光発電
- ② 風力発電
- ③ 水力発電
- ④ バイオマス発電
- ⑤ 地熱発電
クリーンエネルギーの筆頭は太陽光発電と風力発電です。2022年の国際的なエネルギー情勢を背景に、太陽光発電は2023年に世界的に急速に拡大。近年の再生可能エネルギー市場において最も注目を集めるエネルギー源の一つとなっています。
風力発電もクリーンエネルギーの中で非常に大きなシェアを占めており、陸上風力だけでなく洋上風力の開発が世界各国で進められています。
世界におけるクリーンエネルギーの現状と課題、日本の実情を見ていきましょう。
■世界のクリーンエネルギーの現状と課題
2021年の主要国の発電電力量に占める再エネ比率を比較すると次のようになります。


1位:カナダ(67.2%)
2位:スペイン(46.3%)
3位:イタリア(40.3%)
4位:イギリス(39.6%)
4位:ドイツ(39.6%)
6位:中国(27.7%)
7位:フランス(21.9%)
8位:アメリカ(20.1%)
9位:日本(20.3%)
カナダのクリーンエネルギーを支えているのは水力発電です。欧州はスペイン、イタリア、イギリス、ドイツで40%以上の高い水準となっています。ドイツはこれまでロシアからのエネルギー輸入に依存していましたが、再生可能エネルギーの開発を進め、2035年にはドイツ国内の電力供給をほぼ完全に再生可能エネルギーによって賄うことを目指すとの方針を示しています。
中国は世界最大のエネルギー消費国であるため、近年、クリーンエネルギー発電設備の増強に力を入れていますが、石炭火力の割合は64.4%を占めています。中国以外でも多くの国々で依然として化石燃料への依存が高く、世界全体で見るとクリーンエネルギーへの移行が進んでいるとは言えません。パリ協定の1.5度の目標を達成するためには、年間約1,000ギガワットの再生可能エネルギー導入が必要とされているにもかかわらず、現状ではその3分の1程度しか達成できていないのです。
これらの課題を克服するためには国際的な協力体制の構築が欠かせません。各国が協調し、技術革新、投資、政策支援を通じて、持続可能なエネルギーシステムへの移行を加速させることが不可欠です。
■日本のクリーンエネルギーの実情と課題
日本のエネルギー事情は現在も火力発電が主要な電力源です。第6次エネルギー基本計画では、2030年度の目標として再生可能エネルギーは36〜38%、火力は41%と定められています。しかし2022年の時点では火力発電が72.8%を占めており、再生可能エネルギーへの移行は順調とは言えません。
先進国の中でも日本は国土が狭いため、大規模な再生可能エネルギー施設の建設には多くの困難が伴います。例えば太陽光発電は国内の自然環境への影響が懸念されており、森林に広大なパネルを設置することによる景観破壊や生態系への影響が指摘されています。
国土の制約だけでなく、再生可能エネルギーの導入には複合的な課題が存在しているのが実情です。
風力発電の設備は北海道と東北地方に集中しており、これは風況に恵まれた地理的条件が主な理由です。一方で大規模な風力発電施設の建設には自然生態系への影響、景観の変化などの課題が指摘されています。
この状況を打破するために、日本の地理的特性を活かした開発と研究が進められています。
■クリーンエネルギーの目指す姿
東京都では2025年4月より新築住宅等には太陽光パネル設置の義務化が始まります。各自治体でも太陽光発電設備の設置を促進するための支援制度を実施し、さらなる普及を目指す動きが強まっています。
平地の少ない日本国土の特性を活かす技術として注目されているのが次世代太陽電池「ペロブスカイト」です。ペロブスカイトは軽量で薄いため、従来の太陽光パネルでは設置の難しかった木造建物や高層ビルの壁、住宅の窓ガラスなどにも設置可能です。従来の太陽電池と比較して製造コストが低く、曲げられる柔軟性も持っているため、さまざまな用途に活用できると期待されています。

洋上風力発電の開発も日本のクリーンエネルギー戦略において重要な位置を占めています。洋上風力発電とは、海上に風力発電設備を建設し、海上の安定した強い風を利用して電力を生み出す発電方法です。四方を海に囲まれた日本にとってこの技術は非常に相性が良く、クリーンエネルギーの切り札となる可能性を秘めています。
日本の地理的特性を活かした有望な選択肢として、地熱発電にも大きな期待が寄せられています。世界有数の火山国である日本は世界第3位の地熱資源を保有しており、安定供給が可能なエネルギー源として注目されています。
国土の制約を克服するため、日本は次世代技術の研究や政策支援を通じてクリーンエネルギーへの移行を積極的に進めています。持続可能なエネルギーシステムの構築こそクリーンエネルギーの目指す姿なのです。

私たち個人にできることは、クリーンエネルギーをより身近な問題として意識し、日常生活の中でその普及を支える行動を選ぶことです。エネルギーをどのように使っているのかを考えることから始め、家庭での省エネを意識し、エアコンの温度設定や照明の使用を見直すこと。また、電力消費を可視化するスマートメーターの導入なども有効です。太陽光発電システムの導入や電力プランを変更するなどのアクションも、クリーンエネルギーへの移行に貢献できるでしょう。
一人ひとりの選択が未来の地球環境を形作ります。国際デーをきっかけにクリーンエネルギーの実現に向けてできることを始めてみませんか?